主にレ・ロマネスクをメインに

つれづれなるままに、レ・ロマネスクについて、あれこれ書き綴ります

『七面鳥 山、父、子、山』(書籍)

書籍情報(公開されているもの)

レ・ロマネスクTOBIさんの初の書き下ろし小説が2021年3月1日(奇しくもTOBIさんの誕生日)に刊行されました。
まず、概要やあらすじは、リトルモアブックスHPから引用させていただきます。 

思い出の中で、ぼくはデコトラに揺られている。
ハンドルを握る父は、ムード歌謡を裏声で歌っていた。

四歳、九歳、十九歳、三十八歳の四章で綴る、ぼくと父の39年。


父や母、一番近くにいた人とのくすぐったい記憶がよみがえる、親子小説の傑作!
レ・ロマネスクTOBI、書き下ろし初小説。

 

[あらすじ]
 「ぼく」は息子が生まれて、いろんなことを思い出した。そうだ、ぼくはずっとカリフラワーを七面鳥だと信じていたんだ。

 ビルも地下も歩道橋もない、広島の林業の町に生まれたぼく。力も気も胃も弱い。父親・フミャアキは、酒を飲んで運転し、カープが負ければ家中のものを捨て、「早うせい」が口癖。「そとづら」だけはいい。デコトラで、スナックで、家業の乾物屋で、スキー大会で、野球場で、運動会で、結婚式場で、パリで……。四歳、九歳、十九歳、三十八歳の四章で綴られる、子と父の物語。

引用元:

www.littlemore.co.jp

 感想とか

この作品は「小説」ということもありますし、ネタバレになるようなことは書かないように留意します。

発売前~購入

初めて小説発売の情報を知ったのは2020年の年末くらいでした。(読む作品の作家がけっこう偏ってるとはいえ)小説はよく読むので、聞いた時は、とにかく「早く読みたい!!」って気持ちでいっぱいでした。
それから、年明けくらいに3/1(月)発売と発表されてから、2ヶ月間、ずっと待ち遠しかったです。

発売直前になると、全国の書店に数量限定でサイン本が置かれるという発表があり、せっかくなのでサイン本を買おうと心に決めました。
そんな中、2021年2月26日(金)、すなわち発売3日前の昼頃にhontoのアプリから通知が届きました。
(普段、本を買う際にはジュンク堂書店を利用していて、その流れで、電子書籍もhontoを使っています。hontoで「ほしい本」として登録していると、入荷したら通知が来る仕組みになっています)
な、な、なんと、発売3日前にもかかわらず、『七面鳥 山、父、子、山』が入荷!ってなってるではないですか!!!

これはすぐに行かねば!って思いましたが、いや、サイン本を買うんやった…って思い止まりました。ただ、思い止まっていたのはほんのわずかの時間だけで、
「サイン本が欲しい」よりも「少しでも早く読みたい」気持ちが圧勝して、すぐにジュンク堂書店に駆け付けました。
そんなこんなで、かなり早めのフライングゲットに成功して、2/26(金)の夜には読み始めて、2/27(土)に子供たちが寝てから、1人部屋に籠って、一気読みしました。

感想

月並みな感想ではありますが、めちゃくちゃいい作品です。
端的に言うと、「笑いと感動の融合」といったところでしょうか。

  • おもしろい笑えるエピソードや驚きの展開が多数あり
  • ぐいぐい引き込まれて、気づいたら感動しまくり

書店に貼られているポスターに、「大感動発売中!」ってありましたが、まさに看板に偽りなしといったところです。

読む前に抱いていたイメージは、「笑えるエピソードのオンパレードで、最後に少しほっこり」って感じでした。これまで書かれている歌詞とか、「ひどい目。」の書籍とか、Twitterやラジオでのご発言のイメージとか、そういったものがベースになっています。
このイメージのうち、前段はまさにその通りでしたが、後段はいい意味で裏切られました、、、「少しほっこり」どころか、「号泣」してしまいました…。
最終章の「三十八歳」の途中からは、なんかもう涙腺のスイッチが入ってしまって、感情が昂って大変な感じになっていました。これもう、部屋で1人で籠って読んでて良かったです、、、電車なんかで読んでたらえらいことになってました。
数日後に「三十八歳」だけ再読しましたが、やっぱりまた涙が溢れました。

もちろん、小説の感想は、読む人によって様々で、その人の嗜好だけでなく、これまで歩んできた人生とかそういったものによっても違ってきます。
僕の場合は、生まれも育ちも田舎で(実際に、「市」でも「町」でもなく「村」)、高齢の父親がいて、この数年で子供ができて…っていう、なんとなくシンクロする部分というか、自分に当てはまる部分も多かったのも、涙腺をより強く刺激することになったんだと思います。

 この小説では、当然ながら(?)、レ・ロマネスクの名曲『ヒゲと風船』のエピソードが登場します。この楽曲は非常におもしろいのですが、『七面鳥 山、父、子、山』を読み終わってから、『ヒゲと風船』を聴いたら、ただおもしろいとかだけではなく、なんか感慨深いというか、ちょっと感動しました。『ヒゲと風船』は感動ってタイプの楽曲ではないんですが、小説とリンクして、小説の余韻で、また違った印象になりました。
小説を読み終わった後には、是非『ヒゲと風船』をお聴きください。

フィクション性について

この作品のジャンルは、「小説」ですが、「自伝的小説」です。
ただ、著者のTOBIさんは、ほとんどが実話とおっしゃっています。ご自身がパーソナリティをされているラジオでのリトルモアの編集者の方との話によると、当初はエッセイとして書いていて、その後に小説にシフトしたということでした。
つまり、限りなく「自伝」に近い「小説」なんですね。

僕がレ・ロマネスクのことを知って、興味を持ち出して、ネット等でいろいろと調べましたが、プライベートの情報をあまり公にされていませんでした。そのあたりはポリシーもあるでしょうし、そういうものかなと思っていました。しかし、この小説を機にけっこうオープンにされた!という受け止め方もできる一方で、それらは「数少ない実話ではない部分」という解釈もできます。とはいえ、「小説」という枠組みの中ではありますが、TOBIさんの素の部分がかなり表現されているのは間違いないと思います。
まさに、ピンクと補色である緑のTOBIさんがぎっしり詰まった小説です。

読者層について

レ・ロマネスクのファンヌの方は、おそらくほぼ例外なく購入されて読まれているのではないでしょうか。で、ほぼ例外なく、この作品を読んだ後は、レ・ロマネスクへのファンヌ度がより一層増しまくったのではないでしょうか。
小説の作品としての素晴らしさもあるんですが、その背景にあるTOBIさんの半生とか、心の内とか、そのあたりを通して、TOBIさんの人間的な魅力をより感じることができるのも大きいかなと思います。

一方で、レ・ロマネスクのことを全く知らない人がこの作品を読んだ時にどんな感想を持つのか、気になります。おそらく、笑いあり涙あり…という感想を持つ方が多いとは思いますが、ファンヌの方が読んだ時とは少し読後感が違うかもしれません。
書店でカバーのデザインとかあらすじとか、そういったものを見て、「レ・ロマネスク」を一切知らない状態で読み始める方も少なからずいらっしゃると思います。そういう方がどんな感想だったか、是非聞いてみたいです。

まとめ

 …って言いつつ、まとめる気はないんですが(笑)、とにかくいい作品なんで、未読の方は是非ご一読いただきたいです。
一気にではなくても、じわじわでも口コミで広がって、徐々にでも話題になって、なんやかんやで広まって、本屋大賞あたり取ったら、さらに話題になってもっと加速度的に広がるので、そのあたりを期待しています。

ちなみに、発売日3日前に、早く読みたい気持ちが勝ってサイン本を断念しましたが、その後、リトルモアWEBからサイン本も購入しました。

 

七面鳥 山、父、子、山

七面鳥 山、父、子、山